01台本がある動画と、ない動画の差

「いい感じの動画を作りたい」——そう思って素材だけ集めて編集を始めると、ほぼ確実に迷子になります。映像はきれいなのに、見終わって何も覚えていない。社長の想いを全部詰めたのに、誰にも刺さらない。原因の多くは映像の技術ではなく、台本がない(=何を、誰に、どの順で伝えるかを決めていない)ことにあります。

ここでいう台本は、ドラマの脚本のような大げさなものではありません。「誰に・何を伝えて・どう動いてほしいか」を、秒数の枠の中に並べた設計図のことです。PR動画でも採用動画でも、この設計図の作り方は共通しています。

そして、AIで動画を作る時代だからこそ、台本の価値は上がっています。映像の生成や編集はAIと仕組みで速く・安くできるようになった一方、「何を伝えるか」だけは、あなたの商売を知っている人にしか決められないからです。

台本づくりに専門技術は要りません。必要なのは、自分のお客様(または求職者)のことを思い浮かべて、伝えることを「絞る」勇気です。

02基本構成——つかみ→課題→解決→行動

短い動画の構成は、突き詰めるとこの4つの流れに行き着きます。PR動画なら「お客様の困りごと」、採用動画なら「求職者の不安」を課題に置き換えるだけで、同じ型が使えます。

動画台本の基本構成:つかみ、課題、解決、行動の4ブロックが順につながる図 STEP 1 つかみ 最初の数秒で「自分の話だ」と思わせる 例:「その看板、素通りされていませんか」 STEP 2 課題 見る人の困りごと・不安を言葉にする 共感が深いほど、続きが見られる STEP 3 解決 自社の商品・サービス・職場が その課題にどう応えるかを見せる STEP 4 行動 「次に何をすればいいか」をひとつだけ 例:検索・LINE登録・応募ページへ
図1:「つかみ→課題→解決→行動」の基本構成。PR動画も採用動画も、この骨組みは共通です。

つかみは「相手の言葉」で始める

最初の数秒で社名やロゴから始めたくなりますが、見る人にとって他社の名前は「自分に関係ない情報」です。「最近、若い人の応募が来ない」「ホームページ、スマホで見づらくない?」——相手が心の中でつぶやいている言葉から始めると、続きを見る理由が生まれます。

行動は「ひとつだけ」

最後に「ホームページも見て、LINEも登録して、電話もして」と並べると、人はどれも選びません。この動画を見た人に取ってほしい行動をひとつだけ決めて、それだけを示します。どれにするかは、動画を流す場所(SNS・店頭・採用説明会)から逆算します。

0330秒・60秒・90秒の使い分け

「長さはどれくらいがいいですか?」は、もっとも多いご質問です。答えは「どこで誰に見せるか」で決まります。長さごとの得意分野を整理しました。

項目30秒60秒90秒
向いている場面SNS広告・店頭サイネージホームページ・SNS投稿採用説明会・商談・展示会
見る人の状態流し見・偶然の出会い少し興味があるすでに関心が高い
入れられる要素つかみ+ひとつの売り+行動基本構成4つがひと通り4つ+事例・人の声・補足
ナレーション分量の目安150字前後300字前後450字前後
ありがちな失敗詰め込みすぎて何も残らないつかみが弱く冒頭で離脱関心が低い場に流して間延び

覚えておきたいのは、短いほど「削る設計」が難しいということ。30秒動画は60秒の半額の手間でできるわけではなく、むしろ「何を捨てるか」の判断が増えます。迷ったら60秒で骨組みを作り、そこから30秒版を切り出すのが進めやすい順番です。

1本で全部やろうとしない。「新規のお客様にも、常連にも、求職者にも見せたい」と1本に詰めると、誰のための動画でもなくなります。目的が複数あるなら、台本の段階で分けるほうが、結局それぞれ短く・安く・伝わるものになります。

04ナレーション原稿のコツ

構成が決まったら、読み上げる原稿(ナレーション)を書きます。文章としてきれいかどうかより、耳で1回聞いてわかるかがすべてです。

  • 1文を短く——「〜ですが、〜なので、〜のため」と続く文は、耳では追えません。1文1メッセージに切る
  • 話し言葉で書く——「弊社は創業以来〜」より「私たちは20年、この町で〜」。書き言葉は耳に残りません
  • 数字と固有名詞は厳選——耳で覚えられる数字はせいぜい1〜2個。いちばん伝えたいものだけ残す
  • 声に出して時間を計る——一般に、聞き取りやすい読み上げは1分300字前後が目安。必ず実測する
  • テロップ前提で省略しない——音声だけでも意味が通る原稿に。テロップは補強であって本体ではない

原稿ができたら、家族やスタッフに1回だけ聞いてもらい、「何の動画だった?」と聞いてみてください。返ってきた答えがあなたの意図とずれていたら、それは聞き手ではなく原稿の問題です。

もうひとつ、見落とされがちなのが「冒頭は音なしでも伝わるか」という視点です。SNSやサイネージでは、音を出さずに見始める人が少なくありません。つかみの数秒は、ナレーションに頼らず映像と短いテロップだけでも意味が通るように設計しておくと、流す場所を選ばない動画になります。

うまい原稿より、1回で伝わる原稿。動画は巻き戻して読み返してもらえません。

05AIで動画を作る前に決めること

xFactory の動画制作は、AI生成の映像と、お手元の既存素材(商品写真・職場の写真・ロゴなど)の組み合わせで作ります。撮影クルーも撮影日の調整も不要です。その分、制作が始まる前に「決めごと」が固まっているかどうかが、仕上がりと往復回数を大きく左右します。

AI動画制作の流れ:決めごとを固める、台本を書く、素材を集める、AI生成と編集、確認して公開の5ステップ。前半の決めごとと台本が仕上がりを左右する ① 決めごと 誰に・目的・流す場所 長さ・取ってほしい行動 ② 台本 つかみ→課題→解決→行動 ナレーション原稿 ③ 素材集め 商品・職場の写真 ロゴ・使用許可の確認 ④ AI生成・編集 台本に沿って映像化 ⑤ 確認・公開 表記・事実関係をチェック ここまでが仕上がりの大半を決める
図2:AI動画制作の流れ。撮影がないぶん、①決めごとと②台本という「考える工程」の比重が大きくなります。

制作前に決めておきたいのは、次の5つです。

  1. 誰に見せるか(ひとりに絞る)
    「30代・子育て中・店の前を毎日通る人」のように、顔が浮かぶレベルまで絞ります。全員向けは誰にも刺さりません。
  2. 見たあとに取ってほしい行動(ひとつだけ)
    検索してもらう、LINE登録、応募ページを開く——ひとつに決めると、台本の終わり方が決まります。
  3. 流す場所と長さ
    SNS広告なら30秒、ホームページなら60秒、説明会なら90秒。§3の表から場面で選びます。
  4. 使える素材の棚卸し
    商品写真・職場の写真・ロゴデータ・過去のチラシ。人が写る写真は本人の使用許可も確認しておきます。
  5. 言ってはいけないことの確認
    効果の断定(「必ず治る」「絶対儲かる」など)や、根拠を示せない「地域No.1」は使えません。迷う表現は制作前に相談を。

06そのまま使える台本テンプレート

最後に、60秒動画を想定した穴埋め式のテンプレートです。括弧を自社の言葉で埋めれば、台本の初稿になります。

  • つかみ(0〜10秒):「(見る人が心の中でつぶやいている言葉・問いかけ)」
  • 課題(10〜25秒):「(その困りごとが続くと、どうなるか。見る人の実感に寄り添う)」
  • 解決(25〜45秒):「(自社の商品・サービス・職場が、その課題にどう応えるか。売りはひとつに絞る)」
  • 行動(45〜60秒):「(取ってほしい行動をひとつだけ。例:『○○』で検索/LINEで気軽にご相談ください)」

採用動画なら、つかみを「転職、迷っていませんか」、課題を「未経験で飛び込むのは不安」、解決を「先輩と2人1組で覚えられる職場」、行動を「まずは職場見学から」に置き換える——という具合に、同じ型のまま中身だけ差し替えられます

埋めてみて手が止まった箇所は、動画の問題ではなく「まだ決まっていないこと」が見つかった箇所です。それが分かるだけでも、台本を書く価値があります。

FAQよくあるご質問

ナレーション原稿は何文字くらい書けばいいですか?

一般に、落ち着いて聞き取れる読み上げ速度は1分あたり300字前後が目安とされています。30秒なら150字前後、60秒なら300字前後です。

書いた原稿は必ず声に出して読み、時間を計ってみてください。読んでみて息が苦しい原稿は、聞く側にも詰め込みすぎです。

動画を作るには撮影が必要ですか?

必ずしも必要ではありません。xFactoryの動画制作は、AI生成の映像と、お手元にある既存素材(商品写真・職場の写真・ロゴなど)を組み合わせて作る方式で、撮影クルーの手配や撮影日の調整は不要です。

だからこそ、映像の方向性を決める台本の役割が大きくなります。

BGMやテロップのことも台本に書いておくべきですか?

細かい指定は不要ですが、「明るく元気に」「落ち着いて誠実に」といった全体のトーンと、絶対に画面に出したい文字(社名・連絡先・キャンペーン名など)だけはメモしておくと、制作側との認識ずれを防げます。

30秒と60秒、どちらから作るのがいいですか?

迷ったら60秒の台本を先に作ることをおすすめします。60秒で「つかみ→課題→解決→行動」が一通り入った台本ができていれば、そこから要素を削って30秒版を作るのは比較的簡単です。

逆に、30秒に詰め込んだものを引き伸ばすと、間延びした動画になりがちです。

まとめ

動画の台本づくりは、「つかみ→課題→解決→行動」の型に、相手の言葉を流し込む作業です。長さは流す場所から逆算し、原稿は耳で1回聞いてわかるかで磨く。AIが映像を作れる時代に、人にしかできないのは「何を伝えるか」を決めることでした。

まずは§6のテンプレートを、コーヒー1杯の時間で埋めてみてください。埋まらなかった括弧が、動画より先に向き合うべき問いを教えてくれます。

xFactory のPR動画・採用動画制作では、この台本づくりからご一緒します。「型は分かったけれど、自社の場合がうまく書けない」という段階のご相談も歓迎です。

xFactory 編集部
ローカル業者の「つくる」を、手の届く価格に。現場で効くノウハウをお届けします。