01「会社案内のまま」だと、相談の手前で外れている
先に結論をお伝えします。町工場・中小製造業のホームページから相談が来ないとき、原因は技術力でもデザインの古さでもないことがほとんどです。発注する側が知りたいことが、ページに書かれていない——これだけです。
いまは、紹介された相手でも、展示会で名刺を交換した相手でも、連絡する前にまずホームページを見られます。そのとき相手が見ているのは、沿革や代表挨拶ではありません。「この会社に、うちの部品を頼めるのか」の一点です。
相談の連絡が来るまでに、相手は3つの関門を越えています。どこで止まっているかで、やるべきことが変わります。
多くの工場さんは、関門②(頼めると分かる情報)が抜けたまま、関門①(見つけてもらう集客)から手をつけてしまいます。順番が逆だと、せっかく人が来ても、判断できずに戻ってしまいます。
02いまどの関門で止まっているか、5分で確かめる
アクセス解析の道具(Googleアナリティクスなど)は要りません。スマホ1台で、次の順に確かめてみてください。
- 探されている言葉で検索する——スマホの「シークレット(履歴を残さない)」画面で、「材質+加工+市区町村名」の形で検索します(例:ステンレス 切削 ○○市)。数ページ見ても自社が出てこなければ、止まっているのは関門①です。
- トップページを10秒だけ見せる——ご家族や入ったばかりの社員さんに見せて、「何ができる会社?」と聞きます。答えられなければ、これも関門①です。
- 対応範囲まで3タップで行けるか——スマホで、対応できる材質・サイズ・ロット(1回に作る個数)にたどり着けるか試します。書かれていなければ関門②です。
- 相談の入口を数える——「お問い合わせ」ページ1か所だけになっていないか。加工事例や対応範囲のページから相談できないなら関門③です。
- 最後に直したのはいつか——設備が変わっているのに何年も同じ内容なら、ここが最初の一手になります。
ここで確かめているのは順位や件数ではなく、自分がどこで止まっているかだけです。検索順位やお問い合わせの数は、Google側の事情や同業の状況でも変わるため、誰かがお約束できるものではありません。
03関門①:発注する側が使っている言葉に置き換える
「精密加工を得意としています」「高品質・短納期」。これは自社から見た言葉です。部品を外に出したい担当者は、こうは検索しません。材質と加工と条件を並べて探します。
ページの言葉を、相手の言葉に置き換えるだけで、見つかり方が変わります。まずは自社でよく受けている仕事を、下の右の列の形で書き出してみてください。
| よくある書き方(自社目線) | 相手が使う言葉 | 言葉の意味 |
|---|---|---|
| 精密加工を得意としています | ステンレス 切削 小ロット | ロット=1回に作る個数。「1個から」「数十個まで」など |
| 最新のマシニングセンタを保有 | アルミ 削り出し 試作 対応 | 試作=量産の前に1個〜数個だけ作ること |
| 高精度な加工が可能です | 公差 ±0.02mm まで対応(自社の実績値) | 公差=許される寸法のズレの幅 |
| 短納期に対応します | お急ぎの相談は「○日から」でご案内 | 相手は日数の目安が知りたい |
| BtoB向けの部品製造 | 会社・工場向けの部品づくり | BtoB=会社同士の取引のこと |
数字を書くときは、必ず自社の実績値だけにしてください。よそのサイトに載っている数字や、いわゆる相場を借りて書くと、後で自分の首を絞めます。
もうひとつ、近くで探している相手に見つけてもらう入口として、Googleビジネスプロフィール(2026年7月時点の名称。地図に会社情報を無料で登録できるGoogleの公式サービス)も使えます。手順は自分でMEO対策をする手順の記事にまとめています。工場見学や打ち合わせで来社がある会社なら、住所と電話が正確に出るだけでも役に立ちます。
04関門②:「うちの部品を頼めるか」が判断できる状態にする
相手は数分で候補を絞ります。判断できる情報がなければ、「問い合わせて聞くしかない会社」より「書いてある会社」を選びます。技術の高さで負けているのではなく、判断材料の数で負けている状態です。
次のリストは、今日そのまま書き出せるものだけを並べました。会議も外注も要りません。
- 対応できる材質(ステンレス・アルミ・鉄・真鍮・樹脂など、扱っているものすべて)
- できる加工の種類(切削・旋盤・板金・溶接・曲げ・研磨・表面処理の可否)
- 扱えるサイズの目安(いちばん大きいもの・いちばん小さいもの)
- 精度の目安(自社で実際に出している値)
- ロットの幅(1個の試作から受けるのか、量産だけか)
- 納期の感覚(通常はどのくらい、急ぎはどこまで相談できるか)
- 図面がなくても相談できるか(現物やスケッチからでも見られるか)
- 対応できない条件(大きすぎる・小さすぎる・この材質は扱っていない・この納期は難しい)
最後の「対応できない条件」を書くのを、多くの会社がためらいます。ですが、ここを書くと条件の合わない相談が減り、話が早く進みます。断ることは失礼ではなく、相手の時間を守ることでもあります。
「何でもできます」は、相手からは何も決まっていないように見えます。
設備一覧を載せている会社は多いのですが、機種名と型番だけでは相手は判断できません。機種名の隣に「その設備で何ができるか」を一言添える。それだけで、設備一覧が判断材料に変わります。
05関門③:取引先名も図面も出せない前提で、事例を書く
ここが、町工場のホームページがいちばん止まりやすいところです。「守秘義務があるから、何も載せられない」。実際、取引先の会社名や図面を勝手に出すことはできません。
それでも、伏せたまま書ける情報は残ります。線引きを一度決めてしまえば、あとは埋めるだけの作業になります。
事例1本は、次の6つを箇条書きにするだけで成立します。文章力は要りません。
| 書く項目 | 書き方の例(社名・製品を伏せたまま) |
|---|---|
| どんな分野向けか | 輸送機器向けの部品/住宅設備向けの金具 |
| 材質 | ステンレス(SUS304) |
| 加工の種類 | 切削と穴あけ、バリ取りまで社内で |
| 大きさとロット | 手のひらに載る大きさ/20個の試作から |
| 納期 | 図面を受け取ってから○日でお渡し |
| 工夫した点 | 治具を自社で作り、段取りの時間を短くした |
写真は、取引先の製品そのものではなく、自社の設備・治具・端材や、形状が特定できない角度のものを使う方法があります。スマホで白い紙を背景に撮るだけでも十分伝わります(撮り方はスマホ撮影の記事にまとめています)。
取引先の会社名やロゴは、書面で許可をもらえたときだけ載せてください。そして、実績を大きく見せるために実在しない加工事例を書くのは避けてください。同業のなかで話は回りますし、失うのは信用そのものです。
相談の受け方も、先に決めておくと相手が安心します。いきなり図面の添付を必須にしないのがこつです。まず文章だけで相談を受け、必要になった段階で秘密保持契約(NDA=知った内容を外に出さない約束の書面)を交わし、そのうえで図面を受け取る。この順番と、図面の渡し方(メール添付か、預かる場所を用意するか)を1行書いておくだけで、「ここは慣れている会社だ」と伝わります。
06同じページが、受注と求人の両方で見られている
もうひとつ、見落とされがちなことがあります。ここまで整えたページは、働き手を探すときにも同じように読まれます。応募を考えている人も、そのご家族も、まず会社名で検索します。設備と仕事の中身が具体的に書かれているページは、そのまま「どんな会社か」の答えになります。求人ページの作り方は中小企業の求人ページの記事、製造業向けのご案内は製造業の方へのページにまとめています。
最後に、費用の話を正直に書きます。つくる側から見た線引きです。
| やりたいこと | xFactoryの5万円のホームページ | 別の作りになるもの |
|---|---|---|
| 対応範囲・設備・会社概要を載せる | できます | — |
| 加工事例を数本、形で見せる | できます(写真は持ち込みでも可) | — |
| 相談の入口を各ページに置く | できます | — |
| 事例を毎月自分で増やしていく | — | 自分で更新できる仕組みが必要 |
| 図面を安全に預かる仕組み | — | 受け渡しの仕組みを別途用意 |
| 英語など多言語で見せる | — | 言語ごとにページを用意 |
xFactory のホームページ制作は税別50,000円(税込55,000円)、公開後の更新サポートは月額 税別2,000円(税込2,200円)です(2026年7月時点。内容はサービス・料金一覧をご覧ください)。5万円で全部が入るとは言いません。含まれる範囲は書面でお渡しします。何が入って何が別なのかの見分け方は5万円のホームページでできること・できないことの記事と見積書の読み方の記事に分けて書いています。公開後に毎月かかるお金の中身は維持費の記事、補助金を検討する場合は補助金の記事をご覧ください。
順番としては、まず1ページでいいので「対応範囲+事例3本+相談の入口」を作ること。作り直しや広告は、そのあとで間に合います(すでに作ったのに反応がない場合は作ったのに集客できないときの記事へ)。
FAQよくあるご質問
うちは下請けで、取引先名も図面も出せません。それでもホームページに載せられることはありますか?
取引先名や図面を出さなくても、書けることは残ります。業種の大きな分類(輸送機器向け・住宅設備向けなど)、材質、加工の種類、サイズとロット(1回に作る個数)の目安、納期の感覚、工夫した点。この6つだけでも、相手は「自社の部品を頼めそうか」をおおよそ判断できます。
写真は、取引先の製品そのものではなく、自社の設備や治具、形状が特定できない角度のものを使う方法があります。取引先の会社名やロゴは、書面で許可をもらえたときだけ載せてください。実績を大きく見せるために、実在しない加工事例を書くのは避けてください。
検索する人が少ない業種だと、ホームページを作っても意味がないのではありませんか?
製造業の検索は、回数そのものは多くありません。ただ「ステンレス 切削 小ロット」のように条件を並べて探している人は、すでに頼む先を探している段階にいることが多いです。数を集めるのではなく、条件の合う相手に見つけてもらうための設計になります。
なお、検索順位やお問い合わせの数は、Google側の事情や同業の状況でも変わります。誰かがお約束できるものではありません。
設備一覧はきちんと載せています。それでも相談が来ないのはなぜでしょうか?
設備の機種名や型番だけでは、相手は「自分の部品が作れるのか」を判断できないことが多いためです。機種名の隣に「その設備で何ができるか」(対応できる材質、最大サイズの目安、精度の目安、対応できるロット)を一言添えると、判断材料に変わります。
あわせて「対応できない条件」も書いておくと、条件の合わない相談が減り、話が早く進みます。
ホームページは5万円のもので足りますか?
「対応できる範囲」「加工事例を数本」「相談の入口」を1つにまとめたページであれば、税別50,000円(税込55,000円)の範囲で作れます。まずここから始める工場さんが多いです。
一方で、事例を毎月自分で増やしていく仕組み、図面を安全に受け取る仕組み、英語などの多言語対応が必要になると、別の作りになります。小さく作って、必要になったところだけ足していく順番をおすすめしています(公開後の更新サポートは月額 税別2,000円/税込2,200円からご案内しています)。
+まとめ
町工場・中小製造業のホームページは、大手のように見せる必要はありません。やることは3つの関門を順番に通すことだけです。
- 関門①:自社目線の言葉を、材質・加工・条件という相手の言葉に置き換える
- 関門②:対応できる範囲と、対応できない条件を書く(判断材料を渡す)
- 関門③:社名も図面も伏せたまま事例を書き、相談は文章から受ける
技術は十分にある。あとは、それを探している人が判断できる形に置き直すだけです。「うちの場合は何から書けばいいか」の整理からでも、お気軽にご相談ください。無理な売り込みはしません。