「予約は入っている。稼働も悪くない。それなのに、手元に残るお金が思ったより少ない」——客室数の少ない宿ほど、ご予約1件ごとの差がそのまま経営に響きます。

先に結論をお伝えします。この記事がおすすめするのは、予約サイトをやめることではありません。出会いの部分は予約サイトに任せたまま、二度目以降のお客様が戻ってこられる受け皿を、ご自身の手元に用意しておくこと。順番さえ間違えなければ、小さな宿でも今週から始められます。

本記事では、2026年7月時点の一般的な仕組みをもとに、①手数料の実額の確かめ方、②直接予約が生まれる順番、③やってはいけない値引き、④公式サイトで予約をどこまで受けられるかの正直な線引き、を順に整理します。むずかしい横文字は、すべて日本語に言い換えながら進めます。

01まず「いくら払っているか」を自分の数字で確かめる

インターネットで「予約サイト 手数料」と調べると、記事ごとにまったく違う数字が並んでいることに気づきます。なぜそうなるのか。理由はシンプルで、手数料は一律ではないからです。

予約サイトごとに料率が違うのはもちろん、参加しているセールや割引、掲載の見え方を強くするオプション、ポイントの負担分、事前にお支払いいただいた場合の決済手数料——こうしたものが、ご予約の種類ごとに積み上がります。つまりよその記事に書かれている数字は、あなたの宿の数字ではありません

ですのでこの記事では、相場の数字を一切書きません。代わりに、ご自身の手で実額を出す手順をご案内します。電卓と1年分の精算書があれば、30分ほどで終わります。

  1. 直近12か月ぶんの精算書(お支払い明細)を、予約サイトごとに並べる
    紙でもPDFでも構いません。管理画面からダウンロードできることがほとんどです。見当たらなければ、担当の方に「昨年1年分の明細をください」とお願いすれば出してもらえます。
  2. 「お客様が支払った宿泊料金の合計」と「差し引かれた合計」を書き出す
    ここが要点です。基本の手数料の行だけを見ないでください。ポイント負担・セール参加分・決済手数料・掲載オプションが、別の行に分かれていることがよくあります。手取りとの差額すべてを「差し引かれた合計」として扱います。
  3. 割り算して、1年ぶんの合計額と割合を出す
    「差し引かれた合計 ÷ 宿泊料金の合計」。これがあなたの宿の実際の負担です。予約サイトが複数あるなら、サイトごとに出すと違いが見えます。

数字が出たら、身近なものに換算してみてください。1年ぶんの手数料は、パートの方の人手にすると何か月分か。布団やお風呂の改修にすると何回分か。「率」のままだとピンときませんが、「年間いくら」に直すと、判断の重さが変わります。明細の呼び方は予約サイトごとに異なりますので、分からない行があれば担当の方に確認して構いません。これは失礼な質問ではなく、当然の確認です。

02「やめる」話ではない。3つの入口の役割分担

実額を見ると、多くの方が「もう予約サイトを引き上げようか」と考えます。ただ、小さな宿ほどここは慎重に。予約サイトは、まだあなたの宿の名前を知らない人と出会える力がとても強い場所です。いきなり外すと、出会いそのものが細ります。

大切なのは、やめるかどうかではなく、3つの入口に、それぞれ違う仕事をさせることです。

3つの入口の役割分担:予約サイトははじめての出会い、Googleマップや検索は名前で調べる場所、公式サイトは受け皿 1 予約サイト はじめての出会い 日付とエリアで探す人が 宿を見つける場所 2 地図・検索 名前で調べる場所 「宿名+空室」「宿名+ 口コミ」で確かめられる 3 公式サイト 受け皿 調べた人が着地して、 そのまま申し込める場所 はじめての出会いは予約サイト。二度目からは、自分の宿へ。 3つを競わせるのではなく、役割を分けるのが小さな宿のやり方です
図1:3つの入口の役割分担。予約サイトは「出会い」、地図と検索は「確かめる」、公式サイトは「受け皿」。どれかを敵にする必要はありません。

ここで、いちばん多い取りこぼしをお伝えします。予約サイトであなたの宿を見つけた方は、その場ですぐ申し込むとはかぎりません。多くの方が、宿の名前で検索し直して確かめます。写真をもっと見たい、料理の内容を知りたい、送迎はあるのか、子ども連れでも大丈夫か。

そのとき、公式サイトが見当たらない。あるいは見つかっても情報が古く、申し込み方法が書かれていない。すると、その方は安心できる予約サイトへ戻って申し込みます。最後のひと押しは自分の宿でできたかもしれないのに、そこだけを外にお任せしている——これが、小さな宿でいちばんもったいない形です。

受け皿づくりは、予約サイトと戦うための準備ではありません。すでにあなたの宿に興味を持ってくれた人を、迷わせないための準備です。だから、掲載をやめる前でも始められます。

この記事に出てくる言葉の言い換え

よく見かける言葉この記事での言い方かんたんに言うと
OTA予約サイトネット上で宿泊予約を扱う会社のこと。じゃらん、楽天トラベル、Booking.com などが代表例です
直販・直予約直接予約予約サイトを通さず、公式サイト・電話・LINEなどで直接いただくご予約
送客手数料手数料ご予約1件ごとに予約サイトへお支払いするお金
ベストレート保証最低価格の約束「ほかより安く売らない」という契約上の約束。条件は予約サイトごとに異なります
予約エンジン(IBE)予約の受付システム公式サイト上で空室と料金を表示し、その場でご予約を確定させる仕組み
リピーター二度目以降のお客様一度泊まって、また来てくださる方

03直接予約が増える「順番」

この話題の記事には、やるべきことが7つ、12個と並んでいることがよくあります。会員制度、限定プラン、季節企画、メール配信、広告——どれも間違いではありませんが、お一人かお二人で切り盛りしている宿に、全部は無理です

大事なのは数ではなく順番です。次の4つを、この順に回してください。

直接予約が生まれる4つの順番:受け皿をつくる、見つかる状態にする、滞在中に次の入口を渡す、思い出してもらう 1 受け皿をつくる 写真・料金の考え方・申し込み方法 この3つが載った公式サイト 2 見つかる状態にする 宿の名前で調べたときに、 自分のサイトへたどり着けるか 3 次の入口を渡す 滞在中に、次からの申し込み先を 1枚のカードで手渡す 4 思い出してもらう 季節の便りを年に数回。 売り込みではなく、お便りとして
図2:4つの順番と、その循環。4まで進むと、また1の受け皿に戻ってきます。1を飛ばして2から始めても、着地する場所がないので回りません。

1. 受け皿をつくる

最初にやるのは、立派なサイトを作ることではありません。調べに来た人が知りたいことが載っている状態をつくることです。最低限、次の4つがあれば役割を果たします。

  • 部屋・お風呂・食事の写真(予約サイトに載せているものと同じで構いません)
  • 料金の考え方(1泊2食で、季節や人数によってどう変わるか。金額そのものより「決まり方」が分かることが大事です)
  • 申し込みの方法(電話番号・フォーム・LINEなど。営業時間と、返事にかかる目安も添えて)
  • アクセスと、よくあるご質問(送迎の有無、駐車場、チェックインの時間、お子様やアレルギーへの対応)

2. 見つかる状態にする

受け皿ができたら、宿の名前で調べたときに、そこへたどり着けるようにします。まずご自身のスマートフォンで、宿の名前を検索してみてください。何が最初に出てきますか。予約サイトのページばかりで、公式サイトが下のほうにありませんか。

ここで効くのが、Googleビジネスプロフィール(地図上に表示される、お店や宿の無料の公式情報)です。ウェブサイトの欄に公式サイトのURLを入れ、写真と営業情報を整えておく。無料でできて、宿の名前で調べた人がまっすぐ着地しやすくなります。手順はMEO対策を自分でやる方法にまとめてあります。

3. 滞在中に、次の入口を渡す

ここが、小さな宿のいちばんの強みが出るところです。チェックインからチェックアウトまでの時間は、手数料がかからない唯一の接点です。お顔を合わせて、お礼を言えて、次のご案内ができる。大きなホテルには真似のしにくい時間です。

やることは大げさでなくて構いません。客室に置く1枚のカードに、「次回からは、こちらのページから直接お申し込みいただけます」と、公式サイトのQRコードと電話番号を載せておく。それだけです。押し売りにしないこと。渡すのは案内であって、お願いではありません。

4. 思い出してもらう

お帰りになったあとは、年に数回で十分です。紅葉の頃、雪の便り、地元のお祭り。写真1枚と数行のお便りを、LINEやメールで。「空いてます、来てください」ではなく、「こちらは今こんな季節です」。思い出してもらえたら、それで役目は果たしています。

あわせて、お客様の声を手元に残しておくのもおすすめです。予約サイトや地図に書いていただいた感想は、その場所からお借りしているもの。Googleの口コミを増やす方法で触れているとおり、集めた声は自分の公式サイトの「お客様の声」としても掲載できるよう、ひと言お断りしたうえで残しておくと、受け皿の説得力が増します。

やることを増やすより、順番を守る。受け皿がないまま集客だけ足しても、行き先がありません。

04やってはいけない値引き——「公式だけ安く」の前に

直接予約を増やす方法として、いちばん先に思いつくのが「公式サイトだけ安くする」でしょう。ここは、慎重にお願いします。

予約サイトとの契約には、最低価格の約束(ベストレート保証)が含まれていることがあります。「ほかの販売先より安く売らない」という取り決めです。条件は予約サイトによって、また契約した時期によって異なり、2026年7月時点でも、すべてに共通する一律のルールがあるわけではありません。

ですので、まずやるべきは値下げの検討ではなく、ご自身の契約書と規約を読み返すことです。どこを見ればいいか分からなければ、担当の方に「価格に関する取り決めがあれば教えてください」と確認して構いません。

もうひとつ、経営の面での注意点があります。一度下げた料金は、戻しにくいということです。手数料は減っても単価が下がってしまい、手取りが増えなかった——ということが起こり得ます。

値引き以外で、直接予約を選んでいただく工夫。到着時の一杯、チェックアウトの少しの延長、お部屋の希望を先にうかがう、連泊の方への地元のご案内。原価が小さくても、お客様にとっての価値は小さくありません。ただし、特典の付け方についても契約上の条件がある場合があります。実施の前に、必ずご自身の契約内容をご確認ください。

なお、口コミについても同じ考え方です。感想をお願いすること自体は問題ありませんが、割引やお土産と引き換えに書いていただく、身内で書く、といったことはしないでください。宿の信用は、積み上げるのに時間がかかり、失うのは一瞬です。

05公式サイトで、予約はどこまで受けられるのか

「公式サイトを作れば、予約サイトと同じことができるのでは」と思われがちですが、ここは正直にお伝えしておきます。予約の受け方には3つの段階があり、必要なものも費用も違います

受け方できること向いている宿必要なもの
① 電話・LINE・お問い合わせで受けるご希望の日程をうかがい、宿が空室を確認してお返事し、確定する客室数が少なく、お電話やメッセージにご自身で対応できる宿ホームページと連絡先だけ。追加の契約なしで始められます
② リクエスト予約(フォーム)日程・人数・ご希望をフォームで受け取り、宿が確定のお返事をするお問い合わせが増えてきて、うかがう項目を決めておきたい宿ホームページ+フォーム。多くの場合、これも追加の契約は不要です
③ その場で確定する予約(予約の受付システム)空室と料金をその場で表示し、お客様の操作だけでご予約が確定するご予約数が多く、電話対応の手が足りない宿予約システムの契約が別途必要(月額がかかり、空室情報を各所とそろえる運用も必要)

xFactory のホームページ制作は 税別50,000円(税込55,000円)、その後の運用サポートは月額 税別2,000円(税込2,200円)です(2026年7月時点)。この中でできるのは①と②まで。③の「その場で確定する予約」は、ホームページとは別のシステム契約が必要で、5万円のホームページには含まれません。5万円のホームページで何ができて、何ができないかでも同じ線引きをご説明しています。

ただ、これは弱点ばかりではありません。客室数が少ない宿なら、1日に数件のお問い合わせにご自身で丁寧にお返事するほうが、かえって選ばれる理由になります。「アレルギーのご相談にすぐ返事がきた」「送迎の時間を融通してもらえた」——その対応こそが、機械では出せない小さな宿の価値です。まず①②で始めて、手が回らなくなってから③を検討する。この順番で十分に間に合います。

06今週からできる、5つのこと

最後に、今週のうちに終わる範囲でまとめます。すべて合わせても、2時間はかかりません。

  1. 精算書を1年分並べて、手数料の合計を出す(約30分)
    01の3ステップのとおりに。率ではなく「年間いくら」を出すのがポイントです。
  2. 自分の宿の名前を、スマートフォンで検索してみる(約5分)
    公式サイトは出てきますか。出てきたページで、空室の確認方法と申し込み方法が分かりますか。お客様と同じ画面を、一度ご自身の目で見てください。
  3. Googleビジネスプロフィールに、公式サイトのリンクが入っているか確認する(約10分)
    ウェブサイトの欄が空欄、あるいは予約サイトのURLになっていることがよくあります。無料で直せます。
  4. 契約書の「価格に関する取り決め」を探して読む(約20分)
    最低価格の約束があるかどうか。ここを知らずに値引きを始めるのがいちばん危険です。
  5. 客室に置くご案内カードの文面を、1枚だけ考える(約20分)
    「またお越しの際は、こちらから直接お申し込みいただけます」と、公式サイトと電話番号。デザインは後からで大丈夫です。

ここまでやっても、翌週にご予約が増えるとはかぎりません。検索順位やご予約数をお約束することは、私たちにもGoogleにもできません。ただ、興味を持ってくださった方が迷子にならない状態は、ご自身の手で整えられます。それが、二度目のご縁が生まれるための最低条件です。

「うちの宿の場合、どこから手をつければいいか」が分からなければ、その段階でご相談ください。ホームページを売り込む前に、まず今の状態を一緒に見るところから始めます。サービスと料金の一覧もご覧いただけます。

FAQよくあるご質問

予約サイトは、やめたほうがいいのでしょうか?

やめることをおすすめする記事ではありません。予約サイトは、まだ宿の名前をご存じない方と出会える貴重な場所です。この記事でおすすめしているのは、出会いは予約サイトに任せたまま、二度目以降のお客様が戻ってこられる受け皿をご自身の手元に用意しておくことです。今の掲載は続けたままで始められますので、まずは公式サイトを整えるところからで大丈夫です。

公式サイトだけ料金を安くしてもいいですか?

値引きを決める前に、契約内容の確認をおすすめします。予約サイトとの契約には「ほかより安く売らない」という最低価格の約束が含まれている場合があり、その条件は予約サイトごと・契約時期ごとに異なります。2026年7月時点でも、すべてに共通する一律のルールはありません。値引きから入るより、到着時の一杯やチェックアウトの延長のような原価の小さいお礼で違いを出すほうが、契約の面でも手取りの面でも無理がありません。特典の付け方にも条件がある場合がありますので、実施前にご自身の契約書と規約をご確認ください。

客室が数室の小さな宿でも、公式サイトを持つ意味はありますか?

客室数が少ない宿ほど、一件あたりの差が経営にそのまま響きます。また、予約サイトで見つけた方が宿の名前で調べたときに着地する場所がないと、そのまま予約サイトに戻って申し込むことになります。公式サイトは「宿を知った方が最後に確かめる場所」です。部屋と食事の写真、料金の考え方、申し込みの方法。この3つが載っているだけでも役割を果たします。

ホームページを作れば、予約サイトと同じように予約が入りますか?

予約の受け方には段階があります。ホームページと連絡先だけでも、お問い合わせやリクエストという形で予約を受けることはできます。一方で、空室と料金をその場で表示してお客様の操作だけで予約が確定する仕組みは、ホームページとは別の契約が必要です。xFactory のホームページ制作 税別50,000円(税込55,000円)に含まれるのは前者までで、後者は含まれません。ご予約の件数やお電話に出られる余力に応じて、段階的に足していくのが現実的です。なお、検索順位やご予約数をお約束することはできません。

まとめ

予約サイトの手数料は、率を眺めているうちは他人事のままです。まず自分の精算書で「年間いくら」を出すこと。話はそこから始まります。

そのうえでやることは3つだけです。①迷った人が着地できる受け皿をつくる。②宿の名前で調べたときに、そこへたどり着けるようにする。③滞在中のいちばん温かい時間に、次の入口を1枚のカードで手渡す。予約サイトを敵にする必要はありません。出会いは任せて、二度目からは自分の宿で。それだけで、手元に残るお金の形は少しずつ変わっていきます。

xFactory は、ホームページ制作 税別50,000円(税込55,000円)と月額 税別2,000円(税込2,200円)の運用サポートで、この「受け皿づくり」をお手伝いしています。地図まわりの整備(MEO対策)が必要な場合は、初期設定 税別20,000円(税込22,000円)+月額 税別8,000円(税込8,800円)でご案内しています(いずれも2026年7月時点)。まずは今の状態を見せていただくところから、お気軽にどうぞ。

xFactory 編集部
ローカル業者の「つくる」を、手の届く価格に。現場で効くノウハウをお届けします。